壁に耳あり障子にメアリー

瑞々しさを失わないための備忘録。ブログ名が既に親父ギャグ。

Printing - Dance Dance Dance

Album: Atomic Heart (1994)

 

300万枚超の売り上げを記録したアルバムAtomic Heartの1曲目と2曲目。Printingがインストゥルメンタル(というか、プリンターの環境音)なので、Dance Dance Danceが実質一曲目である。ライブでもおなじみの楽曲で、サビのときに爆発演出がかかったりする。「ライブで盛り上がるための曲を作った」と桜井が言う通り、歌詞にそれほど深い意味はないが、深い意味が込められていないからこそ、桜井の作詞術の本質的な部分が透けて見えてもくる。

 

この曲は、桜井和寿が24歳の年に発表された楽曲である。Dance Dance Danceというタイトルとは裏腹な倦怠的な歌詞が多用されつつ、それらを受け入れたうえで未来へ進もうと締められる。Mr.Childrenの歌詞の王道に乗った歌詞展開である。詳しく見ていこう。

 

まず、Aメロでは、日常生活における不満が歌われる。

 

クルクルと地球儀を回して
世界中を旅してる気分
あまりに低い天井を見上げれば
救いようもなく また寝転がる

 

君の傷口 そっと舐めると
よじれて涙がこぼれた
ビタミン剤が主食の生活(くらし)で
ヘルスメーターにも笑われ

 

それに呼応するかのようにBメロでは、社会に向けた不満、猜疑心が吐露される。

 

テレビに映るポーカーフェイス
正義をまとって売名行為
裏のコネクション 闇のルート
揉み消された真相

 

今日もハイテンション ロックンロールスター
虚像を背負って ツイスト&シャウト
みんなでファッション 舞い上がれ
落ちる定めのヒットチャート

 

このころのMr.Childrenは、シングルCROSS ROADやinnocent worldがミリオンヒットを飛ばすなど、急激に売れ始めたころである。テレビ露出も以前とは比べ物にならないほど増えた。そんな中「テレビに映るポーカーフェイス」「今日もハイテンション ロックンロールスター」とは、メディアにちやほやされ、一躍スターと化した虚像の桜井和寿を表していると読むこともできるだろう。その顛末は、彼に言わせれば、「落ちる定め」となっているらしいが。

 

そのことは、サビで如実に示唆される。

 

満たされない夢と欲望の彼方に
残された君と希望の橋を渡ろう

 

資本主義消費社会において、決して満たされることのない「夢と欲望」に直面した彼は、そこから君と抜け出そうとする。抜け出した先で彼らはどうするのか。

 

さぁ 踊ろう 世界が終わるまで
その未来を 僕の手に委ねたなら
Dance Dance Dance

 

ただ踊るのである。桜井和寿は、嫌気がさすほどの資本主義の潮流に投げ出されるが、強く抵抗はしない。あくまで、踊りあかすのみである。そこに思想はない。しかしながら、現在を享受するには最も適した方法であるとも言えるのだろう。

 

ちなみに2番Bメロにある、lonely playとは自慰行為のことである。Mr.childrenの歌詞には、オナニーやセックスを仄めかす箇所が多々ある。この曲もそのうちの一つである。